この記事では、ネットワークスペシャリスト試験対策の一環としてスパニングツリーについて詳しく解説をします。
スパニングツリーは、ネットワーク内で発生するループを防ぐことで、安定した通信環境を提供し、データが正常にやり取りされることを確保するための技術です。
これにより、大規模なネットワーク障害を回避し、効率的なデータの流れを維持できます。
特にネットワーク設計や管理においてはスパニングツリーの知識が欠かせないため、試験対策にも非常に役立ちます。
この記事を通じて、まずはスパニングツリーの基本を学びましょう。
スパニングツリーとは
スパニングツリー (Spanning Tree) とは、ネットワーク内でデータが無限に巡回する「ループ」を防ぐための仕組みです。
たとえば、ネットワークに複数の経路が存在すると、データが同じルートを何度も循環し続ける可能性があります。

この状態を「ブロードキャストストーム」と呼び、ネットワークの性能を著しく低下させる原因になります。
- 冗長な経路の存在: ネットワークが冗長な構成(つまり、複数の経路が存在する構成)で設計されている場合があります。これは、障害発生時に他の経路を使えるようにすることでネットワークの信頼性を高める目的があります。しかし、冗長な経路があると、データが複数のルートを通過する可能性が生まれ、ループが発生するリスクが増えます。
- ブロードキャストメッセージの送信: ネットワーク内で、デバイスが新しいデバイスを探したり、アドレスを解決するためにブロードキャストメッセージを送信することがあります。ブロードキャストメッセージは、ネットワーク内のすべてのデバイスに向けて送信されるものであり、これによってすべてのデバイスがメッセージを受信します。
- ループによるメッセージの無限循環: 冗長な経路がある場合、ブロードキャストメッセージは複数の経路を通って同じネットワークを何度も回る可能性があります。この状態が「ループ」です。特にスイッチングハブなどがデータフレームを転送し続けることで、メッセージがネットワーク内を無限に巡回します。
- ブロードキャストストームの発生: ループが発生すると、ブロードキャストメッセージが何度もネットワーク内を巡回し、その数がどんどん増えていきます。これを「ブロードキャストストーム」と呼びます。この状態では、ネットワーク帯域が不要なブロードキャストメッセージで埋め尽くされるため、他の正規の通信が行えなくなります。
- 帯域の枯渇とネットワークメルトダウン: ブロードキャストストームが続くと、ネットワーク内の帯域が完全に使い果たされます。これにより、データが適切に伝送されなくなり、最終的には「メルトダウン」と呼ばれる状態に陥ります。メルトダウンが発生すると、ネットワーク上のすべての通信が停止し、システム全体が機能しなくなる恐れがあります。

メルトダウンが起こってしまうと大変ですね!
スパニングツリーは、これを防ぐために、ネットワーク全体を仮想的なツリー(木)のような構造に再編成します。
このツリー構造を作るためには、一部のポート(接続点)を無効にし、無駄な経路を取り除いてループができないようにします。



そもそも最初からループ構造でネットワークを繋がなければ良いのではないですか?



そうとも言えないのです。このようなループ構造になる理由は、二つあります。
- 間違えてブリッジやスイッチを接続してしまった(人為的なミス)
- どこかの通信経路に障害が起こった際に、別の経路で通信が可能になるように、信頼性を高めるために行う



なるほど、信頼性を高めるための冗長構成というのは職場でもちょっと耳にしたことがあります!





この無効にしたポートを「ブロッキングポート」と呼びます。
ブロッキングポートは、一時的にデータのやり取りをしないように設定されることで、ループが防止されます。



具体的にはどのようにしてスパニングツリーを作るのですか?



具体的には、スパニングツリープロトコル (STP) という仕組みを使います。これはIEEE802.1Dで定義されています。
このプロトコルは、ネットワークの全ブリッジ間で特別なメッセージ(BPDU:Bridge Protocol Data Unit)を1〜10秒間隔で送受信することによって、どのポートを有効化し、どのポートをブロックするかを決定します。
このBPDUには各スイッチの識別情報(ブリッジID)やパスコストが含まれており、それをもとにネットワーク内の最適な経路を判断します。
※ブリッジIDはスイッチの優先度とMACアドレスを組み合わせたもので、ネットワーク内のルートブリッジを決定するために使用されます。


※パスコストはデータがネットワークを通過する際の経路のコストを示し、最適なパスを選択するための基準となります。
これにより、ネットワーク内のすべてのデバイスが適切に接続されつつ、ループが発生しないようになります。
スパニングツリープロトコルの重要性
このスパニングツリープロトコルは、「ブリッジ」だけではなく「スイッチングハブ」でも利用されているものです。



ですがブリッジであればデータの出入り口は一つずつですので、とてもシンプルになります。試験対策としてもブリッジでの理解で十分ですよ。
スパニングツリーの技術がないと、ネットワークが複雑になるにつれて、ループが原因で大規模な通信障害が発生するリスクが高くなります。
そのため、スパニングツリープロトコルは非常に重要な役割を果たしています。
- ループを防ぐ – データが同じルートを巡回するのを防ぎます。
- ブロッキングポートの設定 – どのポートを無効にするかを決めることで、ツリー構造を作り、ネットワークを最適化します。
- BPDUの活用 – BPDU(Bridge Protocol Data Unit)は、スパニングツリープロトコルにおいて、ネットワーク内のブリッジ同士が情報をやり取りするための制御メッセージです。これにより、どのポートを有効にし、どのポートをブロックするかを決定することで、ネットワーク内のループを防ぎます。BPDUには、各ブリッジの識別情報(ブリッジID)やパスコストといった重要な情報が含まれており、これらを基に最適な通信経路が選択されます。
まとめ
スパニングツリーの仕組みを理解することは、ネットワーク設計において安定性と効率を確保するために非常に重要です。
また、スパニングツリーの基本的な動作原理やスパニングツリープロトコルの役割、ブロッキングポートの仕組みなどを押さえることで、ネットワークスペシャリスト試験の対策として役立つ知識が身につくでしょう。
スパニングツリーについては、次の記事でも詳しく学んでいきます。