マルチアクセス

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ネットワークスペシャリスト試験は、高度なネットワーク技術に関する知識を問う試験です。

前回の記事ではOSPFの概要とネイバーの確立、ルートの決定までの範囲を学習しました。

今回は「代表ルータ」と「バックアップ代表ルータ」について学習します。

ネットワーク負荷を軽減し、効率の良い通信を保ちながら信頼性も向上させるこれらの技術について、詳しく見ていきましょう。

石田先生

前回に引き続き試験にも出やすい範囲ですので、きちんと覚えてくださいね。

はい!頑張ります!

目次

マルチアクセス環境とは?

OSPF(Open Shortest Path First)におけるマルチアクセスとは、複数のルータが同じネットワークセグメントに接続しており、互いに直接通信可能な環境を指します。

石田先生

このようなネットワークを想像してもらうとわかりやすいでしょう。

マルチアクセス環境では、ルータが複数存在するため、ルーティングテーブルやネイバー関係の管理が複雑になることがあります。

うわっ、ネイバー関係が蜘蛛の巣のように複雑になってしまっていますね。

特に、全てのルータがネイバー関係を形成する場合、リンク状態の更新やHelloパケットの交換頻度が増大し、通信量が急増するリスクがあります。

これにより、CPU負荷が高まり、ネットワーク全体のパフォーマンスが低下する可能性があります。

これは良くない状態なんだなって見ただけでわかります……。

こうした問題を解決するために使われるのが、「代表ルータ(DR)」と「バックアップ代表ルータ(BDR)」です。

代表ルータとバックアップ代表ルータ
  1. 代表ルータ(DR: Designated Router)
    • マルチアクセスネットワーク内で中心的な役割を果たします。
    • 他のルータからLSAを受け取り、それをネットワーク全体に広報します。
    • これにより、ルータ間の通信がDRを中心とした1対多の形態になり、トラフィックが効率化されます。
  2. バックアップ代表ルータ(BDR: Backup Designated Router)
    • DRが故障した場合に備えた予備のルータです。
    • DRが正常であれば、通常はパッシブな状態で動作しますが、DRが機能しなくなった場合、即座にDRとしての役割を引き継ぎます。
石田先生

代表ルータとバックアップ代表ルータは、Helloパケットを送り合って状態が「2-Way」になると選出されるのでしたね。

前回学んだ時はよくわかりませんでしたが、今聞いてようやく理解できました!

まずは代表ルータだけで通信の流れを見てみましょう。

代表ルータが選出されると、代表ルータだけがネイバー関係を構築するようになります。

わっ、シンプルになりましたね!

代表ルータが選出されると、パケットは代表ルータから非代表ルータへと送られるようになります。

非代表ルータが受け取ったパケットは代表ルータに送られ、代表ルータから目的のルータに送られます。

石田先生

数十秒ごとの生存確認も、上図のネイバー関係だけで行われるため、ネットワーク負荷がぐっと軽減されます。

代表ルータはどのようにして決定されるのでしょうか?

石田先生

それについても詳しく見ていきましょう。

代表ルータ(DR)の決め方

代表ルータは、OSPFルータがHelloパケットを交換する際に自動的に選出されます。

まず、各ルータはHelloパケットを送信し、同じネットワーク上の他のルータを認識してネイバー関係を確立します。

ここまでは前回習った通りですね。

この時、各ルータのインターフェースごとに設定された優先度(OSPF Priority)が確認されるのです。

プライオリティの範囲は0から255で、デフォルト値は1です。なお、プライオリティが0の場合は代表ルータ・バックアップ代表ルータの候補から外れます。

このようなネットワーク(セグメント)を例にして、代表ルータ選出のプロセスを確認してみましょう。

ルータIDやインターフェースごとに設定されるプライオリティは、ネットワーク担当者が手動で変更することができます。

全てのセグメントに属するルータのIDとプライオリティが出揃いました。

プライオリティが最も高いものが代表ルータになるということですから、オレンジのセグメントではルータID「3.3.3.3」のルータが代表ルータになるということですね。

石田先生

その通りです。

緑のセグメントでもプライオリティが最も高いのがルータID「5.5.5.5」の「150」ですので、代表ルータとなるものを探しやすかったかもしれません。

では、もしプライオリティが最も高いルータが複数あった場合はどうなるでしょうか?

ルータID「3.3.3.3」の緑のセグメントに属するインターフェースが150に設定され直しました。

オレンジのセグメントではこのルータが代表ルータですけど、緑のセグメントでは代表ルータになれないのですか?

セグメントが異なると、代表ルータは別のものに設定されることもあります。

上図の場合では、ルータIDが高い「5.5.5.5」のルータが代表ルータに選出されました。

そうすると、ネイバー関係は下記のようになります。

セグメントごとにネイバー関係がスッキリしていますね!

石田先生

このような状態で、パケットが流れてきたときの動きも確認してみましょう。

代表ルータではないルータ(非DR/BDRルータ)からパケットが流れてきた場合、そのルータは代表ルータにパケットを送信します。

そして代表ルータから他の代表ルータにパケットが送信されます。

代表ルータからその他のルータにパケットが送られ、送られた先のルータも代表ルータだったので、代表ルータからネイバー関係を結んでいるその他のルータにまたパケットが送られます。

バックアップ代表ルータ(BDR)とは

バックアップ代表ルータ(BDR: Backup Designated Router)は、代表ルータが故障した場合に備えて設定される予備のルータです。

代表ルータが正常に動作している間は、バックアップ代表ルータは通常パッシブな状態で待機し、代表ルータがネットワークの管理を担当します。

しかし、代表ルータに障害が発生すると、バックアップ代表ルータは即座にその役割を引き継ぎ、ネットワークの連続性を維持します。

この仕組みによって、OSPFネットワークは代表ルータの障害時にも迅速に対応できる高い耐障害性を持つことが可能となるのです。

石田先生

バックアップ代表ルータは、代表ルータの次にプライオリティが高いルータが選出されます。

バックアップ代表ルータの存在は、ネットワーク全体の安定性と信頼性を向上させるために非常に重要です。

また、バックアップ代表ルータは代表ルータの状態を常に監視し、切り替え時の遅延を最小限に抑える役割も果たしています。

まとめ

OSPFにおけるマルチアクセス環境では、代表ルータ(DR)とバックアップ代表ルータ(BDR)が重要な役割を果たします。

これらの仕組みによって、ネットワークの効率的な運用やトラフィックの最適化が可能となり、高い耐障害性を備えるネットワークを構築できます。

石田先生

代表ルータとバックアップ代表ルータの選出方法についてはきちんと覚えられましたか?

インターフェースのプライオリティが高い順に選出されます!

石田先生

ばっちりですね!

OSPFの範囲の学習はもう少し続きます。

試験に頻出の範囲であり、理解が難しいところでもありますので、丁寧にじっくり学習していきましょう。

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