ネットワークスペシャリスト試験では、ネットワークの設計や運用に関する幅広い知識が求められます。
その中でも、特に重要なトピックとして挙げられるのがIPアドレスの管理や変換技術です。
NATやNAPTは、ネットワークアドレスの有効活用やセキュリティ強化において欠かせない技術であり、試験でも頻出する分野です。

気合いを入れて学習しなければいけませんね!
NATやNAPTを学ぶことで、限られたグローバルIPアドレスを効率的に活用し、また、セキュリティを強化することができるようになります。これらの技術はポートフォワーディングやVPN設定などの高度なネットワーク構築の基礎ともなり、試験対策や実務に役立つ重要なスキルです。
試験合格に向けて、ぜひ最後までお読みください。
IPアドレス枯渇問題
インターネットの普及に伴い、IPv4アドレスの枯渇が大きな課題となっています。
IPv4は約43億個のアドレスを提供していますが、急速なインターネットの普及によりこれらのアドレスが不足しています。


この問題を解決するために、IPv6の導入が進められているものの、現時点ではIPv4とIPv6が混在している状況です。
IPv6は128ビットのアドレス空間を持ち、ほぼ無限に近い数のアドレスを提供することが可能です。
(※IPv6については別の記事で改めて詳しく学習します)
しかし、既存のインフラやアプリケーションがIPv4を前提としていることが多いため、完全な移行には時間がかかるとされています。



このため、現段階ではNATやNAPTといった技術が補完的な役割を果たしています。



アドレス枯渇の影響を軽減するためにNATやNAPTが利用されているのですね。
これらの技術は、限られたグローバルIPアドレスを有効活用し、多くのデバイスがインターネットに接続できるようにするだけでなく、ネットワークのセキュリティ向上にも寄与します。



NATやNAPTにはさまざまなメリットがあるのですね。
また、これらの技術を適切に運用することで、企業や家庭のネットワーク環境が効率化され、通信コストの削減にもつながります。
グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレス



インターネット上で通信をするためには、IPアドレスが必要でしたね。
このIPアドレスは、グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスの二種類に分けられます。
グローバルIPアドレス
グローバルIPアドレスはインターネット上で一意に識別されるアドレスであり、各デバイスが直接インターネットに接続する際に使用されます。
たとえば、WebサーバーやクラウドサービスではグローバルIPアドレスが利用されており、これによって外部のユーザーがサービスにアクセスすることが可能になります。
このアドレスはインターネット全体で共有されている限られたリソースであるため、適切な管理が求められています。


ICANN(The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)は、インターネットのドメイン名やIPアドレスの割り当てを管理する非営利組織です。1998年に設立され、カリフォルニア州に本部を置いています。
- IPアドレスの管理
- ドメイン名システム(DNS)の管理
- ルートゾーン管理
- ポリシーの策定
- 国際化対応
プライベートIPアドレス
内部ネットワークで使用されるアドレスは、ルータなどのデバイスを介してインターネットに接続されます。



プライベートIPアドレスとして使用できるIPアドレスの範囲は次のようになっています。
- 10.0.0.0 ~ 10.255.255.255
- 172.16.0.0 ~ 172.31.255.255
- 192.168.0.0 ~ 192.168.255.255



限られたネットワーク内で使うのだから、何でも良いというわけではないのですね。
プライベートIPアドレスは家庭用ネットワークや企業内LANで一般的に利用され、コスト削減やセキュリティ向上に寄与することが多いです。
また、プライベートIPアドレスは、ネットワーク内で各デバイスを識別する重要な役割を果たします。





限られたネットワーク内で各デバイスを識別できれば良いので、別のネットワークで同じIPアドレスが使われていても大丈夫なのですね。
プライベートIPアドレスは、内部ネットワーク内でのみ有効であり、外部のインターネット上では利用できません。
このため、プライベートIPアドレスとグローバルIPアドレスを変換する仕組みが必要となります。



それが、この後学習するNATとNAPTです。
NAT
NAT (Network Address Translation) は、ネットワークアドレス変換技術を指します。
内部ネットワークのデバイスがプライベートIPアドレスを使用してインターネットに接続する際に、NATを利用してグローバルIPアドレスに変換します。



プライベートIPアドレスのままでは同じIPアドレスを持つデバイスがあるかもしれませんもんね。



だからグローバルIPアドレスに変換する機能が必要なんですね。
この変換は、異なるLAN間で通信を行う際にも重要な役割を果たします。
あるLANから別のLANに通信を送る場合、一度グローバルIPアドレスに変換してから送信し、相手側で再びプライベートIPアドレスに戻すことで、ネットワーク同士の通信が成立します。


- 静的NAT
- 1つのプライベートIPアドレスを特定のグローバルIPアドレスに変換します。
- 主にサーバーの公開などに利用されます。
- 動的NAT
- 複数のプライベートIPアドレスを一時的に利用可能なグローバルIPアドレスに変換します。
- グローバルIPアドレスが不足する場合、変換に失敗する可能性があります。
NATはインターネット接続において、プライベートネットワークを保護しながらグローバルIPアドレスを有効に活用するための重要な技術です。
NATトラバーサルとは
NATトラバーサル(Network Address Translation Traversal)とは、NAT(ネットワークアドレス変換)を使用しているネットワーク環境で、インターネットを介した通信がスムーズに行えるようにするための技術や手法を指します。
NATは、ローカルネットワーク内のデバイスにプライベートIPアドレスを割り当て、外部の通信にはグローバルIPアドレスを使用する仕組みです。


この仕組みはIPアドレスの枯渇問題を解消する一方で、外部からの直接通信が制限されるという課題があります。
この課題を解決するためにNATトラバーサルが利用されます。
NATトラバーサルとは、「NAT(ネットワークアドレス変換)」によって制限される直接通信を可能にする技術や手法の総称です。
NAT環境では、プライベートIPアドレスを持つデバイスが外部ネットワークと直接通信することが難しいため、STUN、TURN、UPnP、ホールパンチングといった手法を用いて通信の障壁を解消します。



詳しくはIPSecについて学習をする際に合わせて学びます。
この技術により、オンラインゲームやビデオ会議、IoTデバイスなど、リアルタイムでのデータのやり取りが必要な場面でスムーズな通信を実現できます。
一言で言えば、NATトラバーサルは「ネットワーク間の壁を越えるための橋」と言えるでしょう。
NAPT
NAPT (Network Address and Port Translation) は、NATの一種であり、IPアドレスに加えてポート番号も変換します。



これにより、複数のデバイスが1つのグローバルIPアドレスを共有してインターネットにアクセスできるようになります。
また、NAPTではトランスポート層で使用されるポート番号を活用することで、どのデバイスが通信を行ったかを識別しています。
NAPTの動作の仕組みを具体的に見ていきましょう。


青いネットワークがあり、NAPT対応ルータは灰色のグローバルIPアドレスを持っています。


ここで右のパソコンからデータを送信すると、プライベートIPアドレスに加えてランダムでポート番号の「1」が割り振られました。


データはルータへと運ばれます。


ここでルータはプライベートIPアドレスをグローバルIPアドレスに変換します。
その際に、ポート番号「1」となっていたものを「2000」と変換し、ポート番号をルータ内部に記録します。



これがグローバルIPアドレスへの変換なのですね。


グローバルIPアドレスが付与されると、データは外部のネットワークに送信されます。





同様に、今度は左のパソコンからデータを送りたいとします。
この場合も、ランダムでポート番号「1」が割り振られています。


データはルータへと送られます。


ここで今度は、ポート番号が「3000」に変換され、記録されました。



同じグローバルIPアドレスだけど、ポート番号を別の数字に割り振ることで区別できるようになりましたね。


先程と同様に、データは外部のネットワークに送信されました。


今度はデータが戻ってくる場合を考えてみましょう。



たとえば右のパソコンがYouTubeを見たくてアクセスしていたとします。



その場合はYouTubeから動画のデータが送られてきますね。
データの宛先は「203.0.113.1:2000」となっています。


NAPT対応ルータへとデータが送られ、ルータは自身の持つポート番号の表を参照します。





「2000」だから「192.168.128.182」のパソコンに送れば良いということがわかりますね。





こうして無事にデータが必要なパソコンへと送られました。



これでYouTubeが見られますね!
この一連の流れを、文章でも確認してみましょう。
動作の仕組み
NAPTの仕組みをもっとわかりやすくするために、以下の3つのステップで動作を説明します。
- 内部デバイスからの通信
- 変換
- 応答の受信
それぞれのステップについて、じっくり見てみましょう。
①内部デバイスからの通信
家庭内やオフィス内のデバイスがインターネットを利用するとき、すべての通信はまずルータを通過します。
このとき、ルータは各デバイスが使っているプライベートIPアドレスと、通信に使われているポート番号を記録します。



このポート番号は、簡単に言えば「どの通信が誰から送られたか」を区別するための番号です。
たとえば、AさんのパソコンとBさんのパソコンが同時にインターネットに接続する場合、両方の通信がルータを経由します。
ルータは、それぞれのデバイスがどのポート番号を使って通信をしているかを覚えておくのです。
また、ポート番号は一種の「しおり」のような役割を果たしており、通信が元に戻る際に、どの端末宛のデータであるかを特定する重要な情報です。
②変換
ルータは、AさんのスマホやBさんのパソコンが持つプライベートIPアドレスを、自分のグローバルIPアドレスに変換します。
そして、通信の「送り元」を識別するためのポート番号も変更します。
こうすることで、1つのグローバルIPアドレスを複数のデバイスが共有できるようになるのです。
たとえば、Aさんのパソコンのポート番号が「1」だった場合、ルーターはそれを「2000」のように変換します。
この情報を覚えておくことで、後で正確に通信を元に戻せる仕組みを作っています。



この変換作業はリアルタイムで行われ、膨大な数の通信を効率的に処理するため、ルータの性能が重要となります。



性能の低いルータだとパンクしちゃいそうですね。
③応答の受信
外部のウェブサイトやサーバーからの返事(応答)は、ルータに届きます。
このとき、ルータは「どのポート番号の通信だったか」を確認し、記録していた情報をもとに、正しいデバイスに返事を届けます。
これにより、Aさんのパソコンにも、Bさんのパソコンにも、それぞれの通信内容が正確に届くようになるのです。



具体的には、受信したデータに添付されているポート番号をもとに、記録されたデバイスのIPアドレスと一致させる作業が行われます。
これにより、通信が混乱することなくスムーズに進むのです。
NAPTのメリットとデメリット
NAPTには、次のようなメリットとデメリットがあります。



まずはメリットから見ていきましょう。
1つのグローバルIPアドレスを家庭や企業内の多くのデバイスで共有できるため、IPアドレスの節約につながります。



NAPTがIPアドレス枯渇問題を解決する一つの手段ということですものね!
また、外部からは内部のデバイスが直接見えないため、セキュリティも向上します。
この仕組みのおかげで、たくさんのデバイスを効率よくインターネットに接続することができます。



さらに、グローバルIPアドレスを追加で購入する必要がなくなるため、コスト削減にもつながります。
加えて、NAPTは家庭用の小規模ネットワークから企業用の大規模ネットワークまで、さまざまな規模のネットワークで柔軟に利用可能です。



こうして見ると、NAPTは良いこと尽くしのような気がしますね。



デメリットも見てみましょう。
一方で、NAPTは通信を複雑にするため、一部のオンラインゲームや通話アプリ(VoIP)がうまく動かないことがあります。これは、特定の通信が固定されたポート番号を必要とする場合に問題となります。



それは不便ですね……。
また、ルータがすべての通信を記録し、ポート番号を変換するため、通信量が多いとルータに負荷がかかり、速度が低下する可能性があります。
大規模なネットワークでは、この負荷を軽減するために高性能なルータや追加の設定が必要になる場合があります。
まとめ
IPアドレスの枯渇問題に対処するためには、NATやNAPTといった技術がどのように機能し、現代のネットワークでどれほど重要な役割を果たしているかを理解することが大切です。



限られたグローバルIPアドレスを効率的に活用するため、プライベートIPアドレスが使われていることがわかりました!



プライベートIPアドレスは、NATやNAPTを使って変換することも覚えました!
これらの技術は、限られたリソースを効率的に活用する仕組みを提供するだけでなく、ネットワークのセキュリティや柔軟性を大幅に向上させます。
ネットワークスペシャリスト試験では、これらの技術が問われることが多く、基本的な仕組みから応用的な利用方法までの理解が求められます。



この知識は試験対策だけでなく、実際のネットワーク構築や運用の現場でも頻繁に役立つ重要なスキルです。
試験本番で確実に得点するためにも、基本概念をしっかりと押さえ、具体例やメリット・デメリットを理解しておくことが大切になるでしょう。