今回の記事は、前回出てきた「ルーティングテーブル」について詳しく見ていきます。

たしか複雑なんですよね……?



難しい範囲は複数回に分けて解説しますので、そんなに身構えなくて大丈夫ですよ。
スイッチングハブにMACアドレステーブルがあったように、ルータにはルーティングテーブルがあります。
ルータはルーティングテーブルを参照して、パケットをどこに送るのかを判断します。
それではルーティングテーブルについて、詳しく学習していきましょう。
ルーティングテーブルとは
ルーティングテーブルとは、ネットワーク機器(例えばルータやコンピュータ)が受信したデータパケットをどこに送るべきかを決定するために使用するデータベースです。
ルーティングテーブルは各ネットワークデバイスに保存され、データを最も効率的に目的地へ届けるための経路情報を管理します。
ルータは直接接続されている機器のIPアドレスしか理解できないため、ルーティングテーブルの情報を使って次に送るべき経路を決定します。
ルーティングテーブル含まれる情報は以下です。
- 宛先ネットワークアドレス:データパケットを送る先のネットワークのIPアドレスです。
- サブネットマスク:宛先ネットワークを正確に識別するために使われるビットのパターンです。
- ネクストホップ:データが宛先に届くために次に進むべきネットワーク機器(通常は他のルータ)のアドレスです。
- インターフェース:ルータ自身のどのポートを通じてデータを送るべきかを示します。
- メトリック:同じ宛先に複数の経路がある場合、どの経路が優れているかを判断するための指標です。メトリックの値が小さいほど、経路は優先されます。
ルーティングテーブルの役割は、受信したデータパケットの宛先アドレスに基づいて最適な送信先を決定することです。
これにより、データは複雑なネットワークを通って適切に転送され、最終的な宛先に届けられます。
ルーティングには大きく分けて2つの種類があります。
- スタティックルーティング:管理者が手動で経路情報を設定する方法です。小規模なネットワークでは有効ですが、規模が大きくなると管理が難しくなります。スタティックルーティングでは、管理者がルータにどの経路を使用するべきかを直接教えます。
- ダイナミックルーティング:ルータが自動的に経路情報を学習し、更新する方法です。これにより、ネットワークが変化しても最適な経路を維持することができます。ダイナミックルーティングでは、他のルータが経路情報を自動的に共有し合います。代表的なプロトコルにはRIP、OSPF、BGPなどがあります。
ルーティングテーブルはネットワークの「地図」のようなものと考えられ、適切なルーティングテーブルがあれば、ネットワーク上のデータは効率よく、確実に目的地に届きます。
スタティックルーティング
スタティックルーティングは、管理者が手動で各ルータに経路情報を設定する方法です。
具体的には、管理者が「どこ向け」(宛先ネットワークアドレス)の場合には「どこに出す」(インターフェースまたはネクストホップのIPアドレス)を決めて設定します。


このように登録されたルーティングテーブルがある場合、宛先ネットワークアドレスがどの行にあてはまるかを判断し、インターフェースまたはネクストホップといった通信経路を選びます。
スタティックルーティングのメリット
スタティックルーティングは、小規模なネットワークに適しており、管理者が経路情報を手動で設定することで経路の管理が簡単になります。
管理者が全ての経路を細かく設定するため、特定の経路を強制的に使用させるなど、経路選択を詳細に制御できるのが特徴です。
また、ルータ間でルーティング情報を交換する必要がないため、プロセッサやメモリへの負荷が少なくて済むという利点もあります。
スタティックルーティングのデメリット
スタティックルーティングには柔軟性が欠けているという欠点があります。
ネットワーク構成に変更があった場合、管理者が手動でルーティング情報を更新しなければならず、これが大規模なネットワークや頻繁に変化するネットワークでは非常に手間がかかります。
特に、ネットワークトポロジーが頻繁に変わる場合には、各ルータでの設定変更が必要で、手間と時間がかかる作業となります。
また、経路が使用不能になった際には自動的に代替経路を選択することができないため、管理者が迅速に手動で新しい経路を設定しなければなりません。これにより、障害発生時の対応が遅れる可能性があります。
スタティックルーティングは柔軟性が低いため、冗長性や障害対応の観点からも制約があります。
ダイナミックルーティング
スタティックルーティングでは、ネットワークのどこかが断線してしまった場合、その経路はそのまま使えなくなってしまいます。
そのため、自動的にバックアップルートを選んでほしいというニーズがあり、これを実現するのがダイナミックルーティングです。





通常はピンクの経路を使っている場合、バツ印のところが断線したら青い経路に自動で切り替えてほしいということですね。



その通りです。
ダイナミックルーティングでは、ルータが互いに情報を交換し合いながら、最適な経路を自動的に決定していきます。
このルータ間の情報交換のことを「広告」と呼びます。ルータは広告を通じて現在のネットワーク状況を把握し、適切な経路を選び出しているのです。
どのインターフェースからパケットを送信するかの計算には、いくつかのプロトコルが使用されます。



これらのプロトコルは、ネットワーク管理者が選ぶもので、詳しくは次の記事で学習します。
これらのプロトコルにより、ルータは動的に最適な経路を選択し、ネットワーク全体の効率性と冗長性を高めます。
ダイナミックルーティングは、スタティックルーティングに比べて自動化されており、ネットワークの変更にも柔軟に対応できます。
これにより、ネットワークが大規模であったり、頻繁に変更が発生したりする場合でも、安定して効率的な通信を維持することが可能です。
まとめ
ルーティングテーブルは、ネットワーク通信の要となる重要な要素です。
スタティックルーティングは小規模で安定したネットワークに適しており、手動で経路を設定することで細かい制御が可能ですが、柔軟性に欠け、大規模なネットワークには向いていません。
一方、ダイナミックルーティングはネットワークが変化する状況にも対応でき、自動で最適な経路を選択することで、ネットワーク全体の効率性と安定性を確保します。
それぞれのルーティング手法には利点と欠点があり、ネットワークの規模や要件に応じて適切な方法を選択することが求められます。



ネットワークスペシャリスト試験の対策として、これらのルーティングの特徴と違いをしっかりと理解しておきましょう。