TCPは、接続を確立した後もデータの正確性と整合性を維持するために、細やかな制御機構を備えています。
その中核を担うのが「順序制御」と「再送制御」です。

これらは、データが正しい順序で届いているか、途中で失われていないかを常にチェックしながら通信を行うための重要な仕組みです。



ふむふむ、TCPは本当に丁寧な通信を行ってくれるのですね。
ネットワークが混雑したり一時的な障害が発生したとしても、TCPは状況を自動的に判断し、必要であればデータを再送することで通信が滞りなく行えるようにします。
このようにしてユーザーは安定した通信環境を保つことができるのです。
この記事では、こうした制御がどのように働いているのかを詳しく見ていきます。
コネクション確立後の通信
3Wayハンドシェイクを通じてTCPのコネクションが確立された後、実際のデータ通信が開始されます。
TCPの通信では、シーケンス番号と確認応答番号の組み合わせが使われます。



TCPの通信のイメージは以下の通りです。





シーケンス番号で「何番からのデータを送るか」を伝えて、確認応答番号で「次のデータの受け取り開始番号は何番か」を伝えるのですね。
さらにTCPでは、通信の信頼性を確保するために「順序制御」と「再送制御」が中心的な役割を果たします。
順序制御
TCPでは送信するデータを「セグメント」と呼ばれる小さな単位に分割し、それぞれにシーケンス番号を付与して送信します。
このシーケンス番号は、セグメント内のデータが通信全体の中でどの位置に属するかを示す情報です。
受信側は、これらのシーケンス番号をもとにセグメントを正しい順序に並べ直し、元のデータに再構成します。
たとえば、順番が「1001、1002、1003」であるべきところ、ネットワークの影響で「1002、1001、1003」の順に届いた場合でも、受信側はそれらを正しく並べ替えることで問題なく処理を続けることができます。



たくさんのデータが届いても、順番通りに並べ直してくれるんですね。
再送制御
ネットワーク上では、パケットが遅延したり、途中で失われたりすることがあります。
TCPはそのような障害に対応するため、受信側から送信側に対して「ACK(確認応答)」を返します。
これは「ここまでのデータは正しく受け取ったよ」という意味の応答です。
もし送信側が一定時間内にACKを受け取れなかった場合、「そのセグメントが届かなかった」と判断し、同じデータを再送します。



これを「タイムアウト再送」と呼びます。
さらに、受信側が「期待していた順番ではないセグメント」を受け取った場合、すでに受け取った最後の正しいシーケンス番号に対応するACKを繰り返し返すことがあります(これを「重複ACK」といいます)。
これを受けて送信側は、欠損しているセグメントがあると判断し、再送を実施します。



これを「高速再送(Fast Retransmit)」と呼びます。
このように、順序制御と再送制御の仕組みにより、TCPはパケットの順番の乱れや喪失といったネットワーク上の問題を自動的に補正し、信頼性の高い通信を実現しています。
この後に、ウィンドウ制御や輻輳制御といった機能も連携して動作し、通信の安定性と効率をさらに高めていきます。
まとめ
TCPの順序制御と再送制御は、ネットワーク通信を安定かつ正確に行うために欠かせない仕組みです。
シーケンス番号とACK番号を活用して、送信データの順序を保ち、万が一のエラーやデータ損失にも柔軟に対応することで、アプリケーションにとって安心できる通信環境が実現されています。
こうした制御があるからこそ、Webページの閲覧やメールの送受信、ファイル転送といった日常的な操作がスムーズに行えるのです。



私たちが安心して通信ができる理由がわかった気がします!
TCPの裏側にあるこれらのメカニズムを理解することで、通信の仕組みに対する理解が深まり、トラブルシューティングやネットワーク設計にも役立つ知識となるでしょう。