ネットワークスペシャリスト試験において、VLANの理解は非常に重要です。
VLANは午後試験で出題されることが多く、近年ではSDN(Software Defined Networking)と合わせて出題されることが増えています。
VLANとはネットワークを仮想的に分割し、効率的な管理やセキュリティ向上を実現する技術です。
今回の記事から4記事に分けて、VLANについて学習をしていきます。
この記事では、まずはVLANの基本的な概念とそのメリットについて解説しますので、全体像を理解するように心がけてください。
VLANとは
VLAN(Virtual Local Area Network)とは、1つの物理ネットワークを仮想的に複数のネットワークに分ける仕組みです。
VLANを使うことで、同じネットワークに接続された機器でも別々のネットワークに分けることができ、各ネットワークは独立して動作します。

これによりネットワーク全体に不要なデータが流れるのを防ぎ、必要な部分だけに通信を届けることができるため、安全性が向上します。
つまりネットワークを区切ることで、ブロードキャストドメイン(ブロードキャストが届く範囲)を自由に決めることができ、他のネットワークへフレームが流れないようにすることでセキュリティも向上するということです。

PC01はPC02とは通信できるけど、PC03とは通信できないということですね。



なるほど、そしてたとえばPC05がブロードキャストしたときには、PC03とPC04にだけデータが送信されるのか。





PC01とPC02にはブロードキャストしたフレームが流れないから、回線が混雑することを防げるというわけですね。



そうですね。さらに実際の運用の例としては、企業で異なる部署ごとにネットワークを分けることで、情報の流出を防ぐことなどが考えられます。
また、VLANの設定方法にはポートベースVLANとタグVLANという種類があります。
ポートベースVLANはスイッチの物理ポートごとにVLANを割り当てる方法で、タグVLANはフレームにタグを付けてVLANを識別する方法です(詳しくは別の記事で説明します)。
簡単に言えば、VLANは「ネットワークのグループ分け」を行い、必要なデータだけを必要な相手に届ける仕組みです。また、無駄な通信を減らし、パフォーマンスの向上にもつながります。
VLAN活用の具体例
たとえば、企業内でVLANを使うことで、部署ごとにネットワークを分けることが可能になり、トラフィックの分離が実現します。
これにより、特定の部門間でのみデータをやり取りすることができ、ネットワークの負荷を減らし、効率的なデータ転送が可能になるのです。
また、異なる部署のデータが他の部署に届くのを防げるため、ネットワークのセキュリティも強化されます。


もしVLANを使わない場合は、物理的にネットワークをルータで区切る必要があり、非常に手間がかかりますが、VLANを使えば論理的にネットワークを区切り、簡単には行き来できないようにすることができます。
また、VLANを設定することで、将来的なネットワークの拡張も容易になります。これは、物理的な配線変更が不要で、新しいデバイスやネットワークセグメントを簡単に既存のVLANに追加できるためです。
VLANの設定方法
VLANは、VLAN対応のスイッチングハブを使って設定します。
スイッチングハブの各ポートに異なるVLANを割り当てることで、同じ物理ネットワーク上に複数の仮想ネットワークを作り出すことができます。


これにより、ネットワーク管理者は1つの物理的なインフラを使って複数の独立したネットワークを構築でき、ネットワークの柔軟性とセキュリティが向上します。
また、障害が発生した場合、その影響を局所化し、他のネットワーク部分に影響が及ぶのを防ぐことができるため、ネットワークの安定性も向上します。
詳しくは次回以降の記事で学習しましょう。
まとめ
VLANはネットワークを仮想的に分割し、効率的なトラフィック管理やセキュリティの向上、柔軟性の高いネットワーク運用を可能にする重要な技術です。
企業内などでのネットワーク管理においても、データの流出防止や不要な通信の削減、安全な環境の実現に大きく貢献します。
また、VLANの活用により、ネットワークの将来的な拡張や障害発生時の影響を最小限に抑え、安定したネットワーク運用が可能になります。
次回以降の記事では、ポートベースVLANやタグVLANについて詳しく説明しますので、引き続き学習を進めていきましょう。